施設研究会 第22回 千葉県の個性的な美術館見学

2015/12/2

千葉県にある個性的な美術館を見学し今後の地域美術館のあり方を考える。

 

アートを活かした地域作りを目指す「市原湖畔美術館」

日本初の写実絵画専門美術館として「ホキ美術館」

 

千葉県の美術館の中で建築としてまたその成り立ちから個性的な2館について施設のご担当に案内を頂いた。ホキ美術館は新設、市原湖畔美術館はリニューアルオープンからそれぞれ数年が経ち、当初より運営面で変わってきたことついてもヒアリングを行います。今後の美術館のあるべき姿として取り組みを聞き、私達がこうした施設を計画する際の良き参考例として見学をさせて頂いた。

 

ホキ美術館

基本設計段階からBIM を活用し、建築、構造、設備とのスムーズな意思疎通、情報共有を実現したプロジェクト。空気の流れや音響、光環境のシミュレーションを重ねることでクオリティーを高めた。機械室、倉庫、ギャラリーの一部は半地下RC とし、展示室の一部はS 造の30mのキャンティレバーで浮遊感を表現。周囲の住宅と違和感のないスケールにまとめられている。写実絵画に特化して開発したLED を採用。一つの絵画に対して10~30 の灯具を使用して、2 種類の色温度を混合して、ハイライトと影で見せ方を変えている。観覧者は、細密描写された画面に肉薄し、本来そこに存在するはずのディテールを超えて理想化された描写を読み取ることを意図している。

 

2013 年日本建築学会作品選奨

最終2 候補に残ったが、住宅地に30m 張り出す展示室が議論の争点となった。

市原湖畔美術館

 1995 年開館の展示施設を自然、アートとの一体化を目指してリノベーションコンペを実施し、2010 年にリニュ-アルオープン。元々の美術館と入り口を逆側に持って来ることで、リノベーションでありながらも、元々の建物の存在をほとんど感じさせない新しい美術館を作ることに成功している。既存 RC 壁と鉄骨造の新しいスチールのキューブが、新旧のコントラストを際立たせ、歴史の積み重ねを感じさせてくれる点が評価されている。旧態化した公共建築のモデルケースとして注目されている。

“中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス”などの、地域に密着したイベントの中心施設として、遠方からも行きたいと思わせるイベントを仕掛けている。アートフロントギャラリーが指定管理者。

(2015 年 日本建築学会作品選集新人賞)

 両施設ともにオープン、リニューアルオープンから数年経っていることもあり、オープン後からの変化、オペレーションで工夫していること、気になる部分を学ぶことができて良かったと思う。 

 

作成:中丸 隆司