施設研究会 第15回 木材会館見学&材木業界の最新事情

2010/9/8

 今回の施設研究会では、日本国内における主要な建材である木材についての理解を含めることを目的として、新木場にある木材関係の施設を見学した。一日を通し、「鴨川商店」「木材会館」、「木材・合板博物館」及び「梶本銘木店」を見学した。

 

◇新木場・木場の歴史

 新木場は、元々深川地区にあった木場がその発祥である。その木場(貯木場)は、1701年(元禄14年)に江戸城築城のために全国から集められた材木業者らを深川の埋め立て地であった木場に集め、その機能が新木場に移るまでの約280年間、幾度かの災害や戦災に見舞われ様子を変えながらも、時の政府の絶大な保護の元に独特の水郷文化を育ててきた。木場は、江戸時代初期から江戸への建設資材の集積場として発展した。その発展ぶりは江戸時代の歌人、歌川広重の“名所江戸百景”にも描かれているほどである。当時、“木造都市”であった江戸は、たびたび大火に見舞われ、その度に紀州など関西方面から大量の木材が木場を目指して運び込まれた。また火災後の木材価格を安定させるため、問屋制度が設けられて統制された。明治維新以降になると、木場の沖合のゴミ等による埋め立てが進み、木場の目の前から海が姿を消した。1973年(昭和48年)から、夢の島14号地(新木場)への移転が始まり、木材業者約600社一万人が移転したと言われている。ただその頃から安価な輸入木材の台頭による故国産木材の高騰や需要の低迷にて、皮肉な事に新木場のやの従来の貯木場は埋め立てられ、跡地に木場公園が造成された。

 

■鴨川商店について

 鴨川商店は、マンダリンオリエンタルホテル東京のカウンター木材等も取り扱いがある木材問屋の老舗で、著名なインテリアデザイナーもよく訪れる場所として知られる。

また、社長の鴨川氏より貯木場や店舗の内部、基礎的な木材の知識についてレクチャーして頂いた。 

 

■木材会館について

 木材会館は、東京木材問屋協同組合100年を記念して建てられた建物である。

この会館の建設には檜を中心に1,000立米以上の国産木材が、建物の内外装の建材として用いられるだけでなく、構造にも使用されている。また、何処の材木屋でも手に入る一般的な木材を用い、伝統的な工法に加え最新の技術を組み合わせていることで、構築されている。

(設計:日建設計、施工:大成建設がその知識と技術を駆使し、材木屋の経験と知恵を加味して完成)

 

○外観について

 外観には、檜の角材を使用している。これまで「木材は燃える」という既成概念から、永く建物の外部に木材を使用することは遠ざけられてきた。しかし、耐火性能の高い鉄骨鉄筋コンクリート造で構造躯体を形成することにより、万が一火災が発生し、外壁が炎にさらされる状況となっても建物躯体が延焼することはなく、耐久性の低下を抑制した安全な構造になっている。また、主要構造部に不燃処理を施した木材を使用することで、仮に階下が炎上することになっても上階まで燃え広がらない構造となっている。

 

1F:エントランスホール

エントランスホールに入ると天井高さのある空間内にどっしりと構えた檜製のオブジェが出迎えてくれる。その場に腰掛けるとゆったりとした空間の中で微かに漂う木の香りを楽しむことが出来る。

□エレベーターホール、舞台床

床面の上に浮いたようにも見える舞台。外部から差し込む光と暖かみのある間接照明とで織り成される光の空間に神々しさを感じた。

□ギャラリー木壁

一部壁面には、檜角材をランダムで組合わされたアートな一面を持つ。

□茶室及び和室

水屋を備えた茶室に加え、暖かみのある和室を兼ね備えており、本格的な日本文化を学ぶ人々の活動拠点として親しまれている。

 

7F:ホールについて

ホールの屋根を支える大梁は、12cm角の檜材で組まれている。また、コンピュータ制御による自動切削加工(通称:NC加工)を用いると共に伝統技法である「追掛大栓継手」を施しつつ、堅木の木栓をはめ込み組上げられている。室内は、天窓から降り注ぐ光と、檜の香りに満ち溢れた暖かみのある空間となっている。    

ホール入口(ホワイエは、黒を基調とし杉材のアートワークが設置されている)

3-6F:オフィス・会議室

天井を檜、床をナラ材で構成し、オフィスと会議室との間仕切りをガラス張りとすることで、開放的な森の中で働いているようなオフィス空間となっている。また社員は、オフィスと一体的に計画されたテラスに直接出入り出来るようになっており、快適に仕事が行えるよう配慮されている。   

2F:テナント用オフィス用ロビー

東京木材問屋協同組合・社団法人東京都木材団体連合室事務室が入居している。

■木材・合板博物館

 木材と合板に関する博物館、2007年に合板の100周年を記念してオープンした。

企業向け研修としての受け入れを多数行っており、今回はその見学コースに基づき案内して頂いた。

 

□ベニヤレース

 

丸太を大根のカツラムキのようにむいて、単板を作る機械。

■梶本銘木店について

 様々な銘木の種類が揃っており、銘木を使った床の間の解説も頂いた。

 

1Fにはショールームと茶室があり、3F展示場には各地から集められた銘木の展示スペースとなっている。

■まとめ

 最後に、樹木を加工し製材までを取り扱う鴨川商店と、既に製材にされているものを取り扱う梶本銘木店とでは、木材の展示方法はじめ、購買方法にも差があることを実感した。近年、木材の需要は減少傾向にある。その理由の一つとして、現代の住宅には床の間付き和室若しくは和室自体のニーズが減少しているということが挙げられる。また、今回訪問した材木店は、銘木という普通の木材とは異なり、高級な木材を取り扱うことから価格が一般品よりも高価である為、尚更需要が減少傾向にあると伺った。

 実際に様々な種類の木材をみることができ、木材の見学を通して、木材の基礎知識を改めて学び考える事が出来た。また、木材会館の見学では、木材が本来持っている美しさ・強さ・暖かみを体感することで、本来の良さを再考する良い機会になったと考える。これらの視察を通じ今後の設計に幅広く活かせるよう努めたいと考えたい。

 

作成:中丸 隆司